結婚10年目。子どもも小学校に通い始め、夫婦としての生活はすっかり落ち着いてきたと思っていました。しかし、その平穏は、突然、大きな音を立てて崩れ去りました。まさに、私たちの結婚生活最大の危機が訪れたのです。この備忘録は、離婚寸前まで追い込まれた私たち夫婦が、どのようにしてその危機を乗り越え、再び愛を育むことができたのか、その一部始終を綴った記録です。
すれ違いの日常、忍び寄る影

きっかけは本当に些細なことでした。仕事の繁忙期が重なり、夫は連日帰りが遅く、私は家事と育児、そしてパート勤務に追われる日々。お互いに余裕がなく、会話も減っていきました。些細なことでイライラし、喧嘩が増えていきました。初めは、いつものように「時間が解決してくれるだろう」と楽観視していました。しかし、気づけば夫婦間の溝はどんどん深まり、修復不可能なほどに広がってしまっているように感じました。
夫の無関心さ、冷たい態度。私は、もう愛されていないのだと、そう感じるようになりました。夫もまた、私に対して同じような気持ちを抱いていたのでしょう。お互いに、自分の殻に閉じこもり、相手を理解しようとする努力を放棄していました。
「もう、この人と一緒にいる意味があるのだろうか?」
そんな思いが頭をよぎるようになりました。子どもたちのことを考えると、簡単に離婚という選択はできません。しかし、このままでは、お互いに傷つけ合うだけ。子どもたちにとっても、決して良い環境とは言えません。
離婚の二文字、現実味を帯びた未来
ある日、いつものように些細なことで喧嘩になり、感情が爆発しました。夫は、怒りに任せて「もう一緒にいるのは無理だ」と、家を飛び出してしまいました。私は、頭が真っ白になり、その場に立ち尽くしました。
「本当に、離婚するのだろうか?」
その夜、夫は帰ってきませんでした。私は、一人、ベッドの中で、これまでの結婚生活を振り返りました。楽しかったこと、嬉しかったこと、そして、悲しかったこと、辛かったこと。様々な思い出が走馬灯のように駆け巡りました。
しかし、思い返せば思い返すほど、最近の私たちは、お互いに優しさを忘れ、相手を思いやる気持ちを失っていたことに気づきました。結婚当初の、お互いを大切に思う気持ち、支え合う気持ちは、いつの間にか、どこかに置き忘れてきてしまったのです。
夫が帰宅したのは、翌朝でした。お互いに、一晩中、考えたのでしょう。私たちは、リビングのテーブルに向かい合い、静かに話し始めました。
「離婚しようか。」
夫の口から出たその言葉は、私の予想通りのものでした。しかし、実際に聞いてみると、胸が締め付けられるような、言葉にできない苦しさがこみ上げてきました。
「そうね…」
私も、同じことを考えていました。でも、心のどこかで、まだ夫への愛情が残っていることも感じていました。
「本当に、これでいいの?」
私は、絞り出すように、そう尋ねました。
夫は、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開きました。
「わからない。でも、このままじゃ、お互いにダメになる。子どもたちにも、悪影響だ。」
夫の言葉は、正論でした。しかし、私は、どうしても、このまま終わりにしたくないという気持ちが強くありました。
最後のチャンス、夫婦で向き合う決意
「もう一度、やり直してみない?私たち、努力を怠っていただけじゃない?結婚当初の気持ちを思い出して、もう一度、お互いに向き合ってみない?」
私は、震える声で、そう訴えました。
夫は、驚いたような表情を浮かべました。
「でも、もう遅いんじゃないか?俺たちは、もう修復不可能なところまで来てしまった。」
「そんなことない!まだ間に合う!私たち、まだ愛し合ってるじゃない!少なくとも、私は、まだあなたを愛してる!」
私は、涙を流しながら、必死に説得しました。
夫は、私の涙を見て、何かを思い出したように、しばらく考え込んでいました。
「…わかった。もう一度、頑張ってみよう。」
夫は、静かに、そう言ってくれました。
その瞬間、私の心に、一筋の希望の光が差し込みました。
「ありがとう…」
私は、夫の手を握りしめ、何度も何度も、そう繰り返しました。
変わるための第一歩、カウンセリングという選択
私たちは、まず、夫婦カウンセリングを受けることにしました。お互いに、自分の気持ちを正直に話し、相手の気持ちを理解しようと努力するためには、第三者の助けが必要だと感じたからです。
カウンセリングでは、お互いに溜め込んでいた不満や不安を、包み隠さず話しました。今まで言えなかったこと、気づかなかったことを、カウンセラーの助けを借りながら、一つ一つ、丁寧に解きほぐしていきました。
お世話になったカウンセラー:離婚したくない場合の奥の手
カウンセリングを通して、私たちは、お互いにコミュニケーション不足だったこと、相手の立場に立って考えることができていなかったことに気づきました。そして、何よりも、お互いにまだ愛情があることを再確認することができました。
新たな絆を育むために、日常の中での小さな努力
カウンセリングと並行して、私たちは、日常生活の中でも、小さな努力を積み重ねていきました。
まず、毎日、必ず、夫婦で会話する時間を設けるようにしました。どんなに忙しくても、10分でもいいから、お互いに、その日の出来事や感じたことを話すようにしました。
また、お互いに感謝の気持ちを言葉にして伝えるようにしました。「ありがとう」「ごめんなさい」という、当たり前の言葉を、意識的に使うようにしました。
さらに、週末には、二人でデートに出かけるようにしました。子どもたちは、実家に預け、久しぶりに、夫婦水入らずの時間を過ごしました。
最初は、ぎこちなかった私たちも、徐々に、会話が弾むようになり、笑顔が増えていきました。
再び見つけた愛、そして未来への希望
離婚の危機を乗り越えて、私たちは、以前よりも、深く、強い絆で結ばれるようになりました。お互いを尊重し、支え合い、愛し合うことの大切さを、改めて実感しました。
もちろん、これからも、夫婦として、様々な困難に直面することでしょう。しかし、私たちは、もう大丈夫です。どんな困難も、二人で力を合わせれば、必ず乗り越えられると信じています。
この備忘録が、同じような悩みを抱えている夫婦にとって、少しでも希望の光となることを願っています。そして、私たち夫婦が、これからも、お互いを大切に思い、支え合い、愛し合いながら、幸せな家庭を築いていけることを、心から願っています。
結婚生活は、山あり谷ありです。しかし、その山を乗り越えた先に、きっと、素晴らしい景色が広がっているはずです。私たち夫婦は、これからも、手を取り合い、共に歩んでいきます。そして、この経験を、子どもたちにも伝え、愛と絆の大切さを教えていきたいと思っています。
この経験を通して、私たちが学んだ最も大切なことは、「愛は努力なくして育たない」ということです。結婚はゴールではなく、スタートです。そこから、夫婦として、共に成長し、愛を育んでいくためには、日々の努力が必要不可欠なのです。
私たち夫婦の物語は、まだ始まったばかりです。これからも、この備忘録に、たくさんの幸せな出来事を書き綴っていけることを、心から願っています。